「乳房再建手術」への正しい理解と乳がん患者さんのQOL向上をめざして活動する団体
「乳房再建手術」への正しい理解と乳がん患者さんのQOL向上を目指して活動しています。
「乳房再建手術」への正しい理解の普及と、患者さんのQOL向上をめざして
現在、日本人女性のおよそ11人に1人が乳がんにかかり、その数は年々増加しています。乳がんは、早期発見・治療ができれば比較的予後のよいがんですが、手術で患部を摘出することで生命は助かっても、胸の形は大きく変形し、患者さんたちには大きな精神的苦痛が残ります。パートナーとの関係に苦しんだり、心の病気を患ったりする方も決して少なくありません。
「乳房再建(にゅうぼうさいけん)手術」は、手術によって損なわれた乳房の形を取り戻すことを目的とした形成外科分野の手術です。これにより乳がん患者さんたちは、女性としての自信を取り戻し、再び前向きに生きていくことができるだけでなく、身体バランスの回復、腰痛・肩こり等の症状の改善などを得ることができます。その意味で「乳房再建手術」には、患者さんたちの“生活の質(Quality of Life=QOL)”を高める大きな意義があるといえます。
NPO法人E-BeCは、乳がんを宣告され混乱のまっただなかにいる人や、乳房をなくした喪失感にとらわれている人に「乳房再建手術」について正しく知ってもらい、希望と自信を持って生きていくきっかけを提供することをめざして活動してまいりました。
「乳房再建手術」をめぐる環境は急速に変化しており、2012年3月には乳腺外科医と形成外科医が一堂に会してよりよい乳房再建手術の普及をめざす「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」が誕生。また2013年7月から2014年1月にかけて、シリコンインプラントを用いた乳房再建手術が保険適用対象となり、患者さんたちの経済的負担が大きく軽減されました。こうした流れのなかで、再建手術を手がける医師や医療機関が全国的に増加し、さらには従来にはない新しい手術方式や技術の導入が進むなど、乳房再建を考える患者さんにとってはかつてないほど充実した環境が整いつつあるということができます。
メディアやインターネットを通じて提供される情報も飛躍的に増大しており、乳がん患者さんが乳房再建手術について知る機会は大きく広がっています。しかしその一方で、再建手術にはどのような利点とリスクがあるのか、自分にはどのような手術方法が合っているのかなどについて、氾濫する情報をうまく整理できずにいる患者さんたちは決して少なくありません。また医療機関の集中する大都市部と地方都市における情報の質と量の格差も縮まっているとはいえないのが実情です。
NPO法人E-BeCのミッションは、このような時代の変化を正しく見極めながら、いま患者さんたちが最も必要とする情報を正確かつ適切に広く提供していくことによって「乳房再建手術」への正しい理解を広げ、患者さんたちのQOLの向上に貢献していくことにあります。私たちは、年間およそ7万6000人以上もの人が乳がんに罹患している現代の日本社会において、一人でも多くの女性たちのお役に立っていけるよう活動を続けいます。
E-BeCは2010年11月、乳がん手術で損なわれた乳房を“乳房再建手術”で取り戻した女性たちがモデルとなった写真集『いのちの乳房-乳がんによる「乳房再建手術」にのぞんだ19人-』(撮影・荒木経惟、出版・赤々舎)を出版しました。
出版のきっかけは、E-BeC理事長の真水美佳が乳がんになりお腹の脂肪をドナーにした穿通枝皮弁による「乳房再建手術」で胸を取り戻したことでした。 それによって色々なことに前向きになった自身の経験を多くの方に知ってもらい、乳がんをきれいに治すことができるのだということを目に見える形で伝えたい・・・・。乳がんの告知を受け手術への恐怖を抱いている人たちや、手術で乳房の喪失や変形を余儀なくされた人たちにも、病気に立ち向かう勇気と希望を抱いていただくことができるはず、という思いを込めて写真集を作りました。
写真集への反響は大きなものでした。しかし、実際に再建した人から直接経験談を聞きたいという声も多く、2013年にNPO法人を設立してウェブサイトから医学的根拠に基づいた情報を発信、情報の少ない地方都市を中心に乳房再建セミナーを開催しています。また、毎年乳房再建に関するアンケート調査を行い、ウェブサイトおよび学会で報告しています。さらにシリコンインプラントの保険適用を機に「乳房再建Hand Book」を制作・発行し多くの病院で活用していただいています。