虐待などで親を頼れない若者たちが安心して自立に向かえる事を目的とし、シェアハウスでの生活支援、アフターケア、若者たちのSOSの受け取り窓口や関係機関との連携など、困った時に「助けて」が言える役割を担います。
この事業名は「クローバードリームライブ2023」で、NPO法人四つ葉のクローバー設立10周年を記念し、コロナ禍を経て4年ぶりに開催することになった講演と音楽ライブを組み合わせた企画です。
テーマは「未来に夢をつなぐ~未来の夢に向かって今できること~」として、厳しい環境を生きてきた若者たちが、過去ではなく、ひたすら前を向いて、未来の自分のために今を精一杯生きているありのままの姿を発信します。一部では作家の寮美千子氏の講演、二部はプロのアーティストの音楽ライブと有志若者もコラボします。
【出演者紹介】
○寮美千子氏
東京生れ。千葉に育つ。2006年、奈良市に移住し、2007年より、奈良少年刑務所で、受刑者の少年たちに向けて「社会性涵養プログラム」を開講。彼らが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ...閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。「空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集」「あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所の絵本と詩の教室」などを出版。現在は執筆活動の他に、全国各地にて講演を行なっている。
○矢野ブラザーズ
ガーナ人の母と日本人の父を持つ。ガーナ共和国生まれ。2013年4月ヴォーカルユニット「矢野 ブラザーズ」を結成。肌の色などによる差別を受けながらも、それを乗り越え、「JAFRICAN(ジャフリカン)」というジャンルに捉われない音楽を展開している。
○yokko
滋賀県甲賀市出身。滋賀を拠点に、全国の教育現場や福祉施設、地域のイベントや企業研修等で『sign!sing!!smile!!(手話と歌で笑顔になろう)』というテーマで、 人権講演ライブを行う。
○めぐみ
感性豊かな才能で、オリジナルソング「四つ葉のクローバー」を作詞作曲し、その澄んだ歌声は、人の心を打つ。現在は結婚し、二児のママとして子育て奮闘中。
【事業の目的】
この事業の目的として、若者たち一人一人が、自分自身に向き合い、大勢の前で自己表現する経験を通して、自信を得て「自分はこんなことができるんだ」「自己表現することは素晴らしいんだ」という確信につなげたいと思っています。また地域社会に対して、孤立しがちな社会的養護の若者たちの存在の認知を広め、お互いが隔たりなく関わりを持つきっかけを作り、多様性を認め合える価値観を広めていきたいと思っています。
「僕たちが社会に出るための機会を公平に与える世の中にしてください」
2014年、第一回「クローバードリームライブ2014 生きる喜び・伝える勇気〜メロディにのせて〜」を開催しました。開催のきっかけは、当時設立2年目を迎えたばかりのNPO法人四つ葉のクローバーの運営資金を集めるためでした。
代表理事の杉山が「寄付をください」と企業を回っても、ほとんど相手にされませんでした。当時の入居者たちに「お金ないわ。どうしようか」と相談したところ、日頃から資金集めに走りまわっていた杉山を知っていたのか「うーん、困ったな。杉山さんが喋るよりも僕たちが前に出るほうがええわ。」と発言してくれたことがきっかけでした。誰もに「四つ葉に寄付したい」と思ってもらえるように、四つ葉のクローバーが持つ”パワー”を発信しようと皆んなで決めました。そして偶然にも四つ葉のクリスマス会に参加した当時23歳女性が、入所中の若者たちの言葉を歌にして「四つ葉のクローバー」テーマソングが出来、音楽ライブで披露することになったのです。
どんな人にも色々な過去があり経験がある。ドリームライブは誰かが乗り越えてきた経験、向き合ってきたからこそ伝えられる想いをメッセージにし、音楽の力を借りて繋ぐ場としてスタートしました。施設出身の青少年にとって人生の選択肢を広げるきっかけになりました。全国の皆様が社会的養護を必要としている青少年の現状を知ること、当法人の活動を知ることで、もっと身近に感じ自分ごとにしていただき、考える時間をご一緒できれば幸いです。
○2016年 クローバードリームライブのテーマは
「僕たちの夢は普通でええねん」〜僕たちの心の声を聴いてください〜
「普通って何?」
「親がいて、家があって、家族がいて、ご飯があること」
シェアハウスの若者たちが語りました。
最初18才で児童養護施設を退所した若者たちを私たちの活動の前面に出すことは酷だと思いました。
NPOを設立して2年半、彼らの声を代弁してきました。
四つ葉チームとして、若者たちが一人一人出来ること。
可能性がたくさんあること。
応援する大人が次々に彼らに関わってくれたことが実ってきたのでしょうか。
「僕たちが前に出ないと世論のうねりにならへんのと違うか?」
「そうやな。俺らが喋ろう!!」
これはもう奇跡かと思いました。
彼らの多くは家での虐待やネグレクト。辛くて悲しくて悔しい子ども時代を育ってきました。
6年~12年間の長い施設生活を余儀なくしてきた彼らです。
「頑張ろうと思っても頑張れない。」「あいつが悪い。」「こっちは何も悪いことしてないのに、腹がたって死にそうや。」「損して生きてきた。」「政治が悪い。」「経済が悪い。」「こんな状況で俺らに何ができるというんや。」
「アンタにこんなみじめな俺の苦しみわかるはずがない。」
若者たちは今、まさにそれらを乗り越えようとしています。
一回飛び越えればいいのかと言えば そうではなく、
この先の人生も“ゆきつもどりつ”何とか何とか歯を食いしばっていくつもの山を乗り越えていくのでしょう。
四つ葉のクローバーは彼らの支援団体ではなく、彼らのガンバリを目の前で見られる,四つ葉の文字通り “ラッキー団体”に進化中です。
○2017年 クローバードリームライブのテーマは
「生きてきた想いを伝えたいんだ」
日本×ガーナ 二つの祖国をもつYANO BROTHERS
日本とアフリカをブレンドした“JAFRICAN”と呼ばれる独自の音楽ジャンルで表現する。
日本の施設で育ったこと、差別や偏見のなかで辛い経験をポジティブな力に変えるために人がいない時に涙流して
「どうやって立ち上がるか」考えたという長男マイケル。
清水エスパルス、ヴィッセル神戸に入団。のちにキックボクサーにも転身した彼。
人知れず流した涙がマイケルパワーを生んだのだろう。
「泣きべそかいてたあの日々にはアッカンベーだ
何度もぶつかって 何度も何度もはいあがって 何度も何度もガンバンベ 最後の最後は自分で」
作詞作曲 矢野マイケル I believeより抜粋
25歳の頃ガーナのレストランで友人とランチを食べていた時、ストリートチルドレンに何度も
「お金ちょーだい」と頼まれたけれど顔も見ず無視をしていたという次男デイビット。
あまりのしつこさに「あげないから向こうに行きな」と言おうとしてその子どもと目が合った瞬間、
幼いころの自分にフラッシュバックした。
誰も助けてくれなかった子どものころを思い出し、あの頃の僕がメッセージを伝えにきたのかなと思った。
心にイナズマがバチバチきた。
今、僕がこの子どもに関係ないフリをしたらあの頃見て見ぬフリをした人たちと一緒になると思った。
あの時のあの思いだけは自分の人生で裏切ってはダメだと思った。
この子どもと出会ったのは運命だと思った。
だから僕は子どもを守ることを人生をかけてやっていこうと10年前に決意した。
それからガーナの子どもたちが教育を受けられるよう幼稚園と中学校を完成させた。
今はまだ人生が見えない人がいるかもしれない。苦しみを背負いきれない自分がいるかもしれない。
今は辛いかもしれないけれど、まだ出会えてないかもしれないけれどその経験そのものが誰かの力になる日がきっとくる。
流した涙はいつか誰かの心に水をやるめぐみの雨になる。本当は誰かの力になる力はすべての人にある。
でもそれに気づける人は苦しみを知っている人間。多くのお金を稼ぐだけが人生ではないと思う。
僕の人生のスーパースターはあの時僕を支えてくれた施設の先生。
僕はガーナでお金をねだる子どもと出会い、支えてくれたその人たちのことを気づけた。はじめて感謝した。
今はまだ夢はなくても、スポットライトあびるような夢でなくても、一歩踏み出したことに誇りをもってほしい。
その一歩が大きな力になっていろいろな人に届くことを信じてほしい。
YANO BROTHRTSは会場にいる施設の子どもたちや若者たちの目を見て語りかけた。
その限りなく優しいまなざしは吸い込まれるほど綺麗だった。
YANO BROTHERS Dream をお聴きください。
○2018年 クローバードリームライブのテーマは
「見つけてください、僕たちを」
舞台にあがったとたんに視線恐怖症に陥ったリョウ君。
何度も何度も間ができた。
スタッフ全員、もう終わっていいよと側にかけよりたい気持ちで胸が痛くなった。
彼は投げ出さなかった。最後はスゴイ言葉を告げた。
「皆さんは、何を聞きたくてここに来られてますか?
皆さんが知りたいことはどんなことですか?
帰りにアンケートに書いてもらえたらありがたいです。
来年語る四つ葉の若者が助かるので・・・」
たくさんの拍手と感想をいただいた。
想いをうまく伝えられず落ち込むリョウ君を想像できたのであろうか。アンケートを書いてくださった人がおられた。
皆さまにも読んでいただきたく紹介させてもらいます。
一昨年、そして昨年、そして今日。
時を経るごとに確かな歩みを感じさせてくれるあなたの姿に
思わず熱いものがこみあげてきます。
一体どれほど心の深いところで、重い扉を押し開いてきたことだろう。
それは決して容易な作業ではなかったはずです。
私はあなたの底しれない優しさと果てしない心の広大さを感じます。
それはもしかするとあなたが日常的に行っている、
その壮絶な心の作業が養った、かけがえのない宝石なんじゃないかと思えてなりません。
その宝石があなたの人生に、そしてこの世の中に
活かし尽くされる未来がやってくることを
心から祈っています。頑張ってくれて有難う。
落ち込んだリョウ君が優しさと勇気と愛をいただき
喜んだのは言うまでもありません。
彼の言葉。
「誰やろ?去年も一昨年もってどこで会ったんやろ。
誰かわからんでも、わかってくれる人がいることが嬉しい。
その人も苦労しはったんかな・・・」
心より感謝致します。
○2019年 クローバードリームライブのテーマは
「僕はボクにただいま」
自分の内面と向き合うことは至難の技だ。
四つ葉のクローバーの支援者 めぐみさんが歌う「光の隠れ家」の歌詞のなかに
「生まれたままの心では生きれなかったから」というフレーズがあります。
天真爛漫に生きていければ幸せだけど、どうしても相手を思うあまり、
自分の本心を隠してうまくやらなくちゃと無理をしたり、
周囲の求める自分であろうと無理をしていませんか?
無理をするとシンドくなって自分の心が内側と外側に分離し、
心のバランスが崩れてだんだん生き辛くなってきます。
歌詞のなかにでてくる「きみ」と「ぼく」は登場人物は一人です。
苦しくて心が分離してしまうと誰かに助けてほしい、わかってほしいと人に助けを求めたくなります。
助けを求めることは大切ですがでも想いを誰かに求めれば求めるほど「なぜわかってくれないの」と
フラストレーションが増えてしまうことはありませんか?
「周りの人に優しくしましょう」と学校は教えてくれるけれど、
もっと自分の心の声を聴いて自分に優しくしませんか?
誰に認めてほしいのか。誰に褒めてほしいのか。
一番認めて欲しいのは自分だとわかれば必要以上にくるしまなくていいのではないでしょうか。
苦しくても内側と外側にわかれた心も本来はお互いを守り合うように、
お互いを補い合うようにして人格を形つくっているのではないでしょうか。
内側の自分も外側の自分も丸ごと自分を受け入れて自分をほめてあげましょうよ。
―虐待を乗り越えて生きてきた。自分と向き合い、今を生きる〜
「自分は生きていてもいい存在なのか?」
イジメや虐待。大変な子ども時代を体験した彼らは、ターニングポイントで施設の先生であったり市役所の人であったり、重要な人に出会っています。
生きてくれたから出会えたこと。
社会的養護の若者たちが、このライブの出演をきっかけにして、悩みながら、時に心折れながらも、それでも何度も立ち上がり、より積極的に、さまざま人間関係を築き、生き甲斐を見つけて自分らしく人生を歩めるようになりました。
また今後は、地域社会との関わりが増え、若者たちが地域住民と顔見知りになることで、困った時に頼れる存在として地域に根差し、一人一人が地域社会の一員として活躍していくことをめざしています。